遺伝子2

女に先導され、情けないのと辛いので、グッタリと背もたれに寄りかかっていた。

そして、彼女が発した言葉に、俺は再び驚く事となったのだ。


「成蔭寺〈じょういんじ〉まで」


成蔭寺?!


寺って……

この人は何者なんだよ?!


敵か味方か見極める前に信用してしまった自分に、今更ながら後悔が襲いかかってくる。


十数分乗って居ただろうか?

立派な門構えの純日本家屋の前に到着した。

門にはでかでかと【成蔭寺】と書かれている。


雨音はお金を払うと、俺を手招きした。

とりあえず、タクシーから降りた俺。

先に降りた雨音は、ずんずんと先に進んで行った。

そんな雨音の背中を見ながら、門の前で入るのを躊躇していた俺。

そりゃ、こんな立派な門構えを見たら、誰だって圧倒されるだろう。


俺が着いてきて居ない事に気がついた雨音は、門の前まで戻ってきてくれた。

「どうしたの?入ったら?」


当たり前の様に言うと、雨音は再び中に入って行った。


躊躇している暇はないか。


そう思い、一歩中に足を踏み出した時だった。

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