遺伝子2
疑問
家に帰ると、渇ききった喉を潤す為に一目散に冷蔵庫に向かった。

思い切り開けた冷蔵庫は、ガタンという音をたてながら冷気を浴びせてくる。

俺は目の前にある二リットルのペットボトルの水を手に取ると、コップに入れるのももどかしくてラッパ飲みしてしまった。

勢い良く体内に入ってくる水に、体中が潤い歓喜しているのが分かる。

やっと喉が潤った時には、二リットルのペットボトルは空になっていた。

びっくりしている俺の背後で


「おかえり」


という女性の声が聞こえてきた。

あまりにも夢中で飲んでいたから、いつから居たか気づかなかったのだ。


「ただいま、お母さん」


そう言うと、俺は天使の様な笑顔を向けてみる。

昔からだが、この笑顔はどうやら女性にはかなり使える様で、困った時は笑顔を作っておけば何とかしのげる事を知っていた。


「ずいぶん喉が渇いて居たのね?」


空になったペットボトルを見たお母さんは、真っ直ぐに俺を見た。

いつもの優しい顔とは違う、全てを見透かされて居るような真っ直ぐな視線に、背中に嫌な汗が流れ落ちていくのが分かる。


「…うん」


俺も所詮は小学三年生。

やはり、お母さんには弱かったみたいだ。


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