遺伝子2
「何か有ったの?」


そう聞いてくるお母さんに


「…いや、何でもないよ。遊びすぎちゃったみたい」


なんて可愛く言ってみたものの、やはり少し動揺していたらしい。

そんな俺を怪訝そうな顔で見た後、お母さんは大きく息を吐き笑顔で俺に

「そう」

とだけ言った。


もしかして、バレた?

なんて思ったものの、何にも言ってこなかったから急いで自分の部屋に戻った。

部屋のドアを閉めてから、勢いよくベッドにダイブしてみる。


それにしても、なぜこんな事になってしまったんだろう?


今までは、自分の意思で人を殺してきたのに……
これじゃ、夢遊病の人と変わらないじゃないか。

自分の体がまるで別の人に乗っ取られてしまった感覚に陥って、背中に嫌な汗が流れ落ちてきた。

このまま、自分の知らない所で人を殺め続けるのか?

ましてや友達や、身近な人を殺してしまうのか?


さすがに、それは嫌だ。


その時、小さい頃に隣の女子大生を殺め警察が来た後で、お母さんが何か言ってた事を思い出した。


何だったかな……


確か、【遺伝子】とか言ってたかな?

俺は勢いをつけて体を起こすと、国語辞典を本棚から引っ張り出してきた。


「いでんし、いでんし…と…」


ブツブツと独り言を言いながら、ペラペラとページをめくっていった。



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