114歳の美女
 「それ、貸しなはれ」

 ときは辞表を二つに破ると、

 「これがうちの答えどす」

と言って、舞台から外へ辞表を放り投げた。


 二つに破れた辞表は、真っ赤に染まった紅葉の中を、ひらひらひらひら落ちて行った。

 「あっ、辞表が。どうして」

 「これがうちの答えどす。わからんお人やな」

 「答え?」


 「これから二人の生活が始まるのに、辞表なんか出されたら、おまんまの食い上げどす」


 「えええっ、二人の生活!もしかして、イエス」


 智也は自分の耳を疑った。


 「これからよろしゅうお頼申します」


 ときがペコンと頭を下げた。


 (間違いない。ときが結婚を決意してくれた。役所も辞める必用はない。それに、それに、あの舞台からも飛び下りる必用だって無くなった。ああ、良かった!心臓が今にも破裂しそうだったよ。ありがとう。ときさん、心からありがとう)


 智也は天にも昇る心地だった。






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