114歳の美女
 「あんたの気持ちようわかる。私は女やから、余計に腹が立つ。こっちはお婆ちゃん。あっちはいつまでも若い。客まで、あっちばかり色目使て、私を馬鹿にしよる。ああ、何であっちばかりが、ええ目するのどすか。泣きたいどすわ」


 「あいつだけが、歳を取らんでいつまでも若い。これでは、不公平や。これは、人種差別より、もっと根が深い。これは、老化差別や。絶対に許せん」


 二人はときの若さを罵り、罵る事で老化への恐れを忘れようとしていた。


 実際、智也の頭の毛は、ここ2、3年、急速に後ろに後退していた。このままで進行が進めば、智也の頭から毛が無くなる日も、そう遠くはない。


 花香も人事ではない。最近、めっきり皺が増え、所々に小さなしみが出来だした。化粧で隠しても、隠し切れなくなっている。それに、自慢だったあの美貌が消え、おばはん顔になって来た。怖い。恐ろしい。恐怖。それゆえ涼しい顔のときが、花香は憎くて、憎くて、殺したいほど憎かった。


 二人はときの若さを肴にして酒を飲み、飲んではときの若さを妬んだ。





 
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