114歳の美女
「うちは123歳。皺くちゃのこの顔が、本当のうちの顔。神様の悪戯で、暫くの間、ええ目さしてもろただけ。元の123歳に戻ったと思えば、ええだけの事や。勿論、前に戻れば、それでええ事やし。なあ、そうやろう」
ときが川に向って独り言を言った。
暫く川を見てから、ときが懐から取り出した石ころを川に放り投げた。
ポチャン。
川は動揺する事無く、さらさらと絶えず流れている。
人の営みに関係なく、ただひたすら川は上流から下流へと流れ続けている。
「人間は何で歳を取るのやろ。こんな皺くちゃの姿で長生きしても、少しも面白い事あれへん。こんな姿で長生きするのやったら、まるで生き地獄どす」
「死にたい。死にたい。死にたい。けど、死ぬ事も叶わん。人間とは、哀れな哀れな動物どすなあ。生ある限り生きんとあかんとは・・・。これも定めか」
ときは、自分の存在そのものが疎ましかった。
川の流れを見て、ときは泣く事しか出来なかった。
渡月橋に深夜、皺だらけの老婆が現れ、夜通し泣いている。
それから暫くして、こんな噂が京都中に広まった。
人間の苦しみや痛みも、皺だらけの老婆の噂も、川は何も無かったように流し去った。
さらさら、さらさら、さらさらと。
渡月橋の下を流れる川は、大堰川、橋を境に桂川となって流れて行った。
了
この物語はフィクションです。

