114歳の美女
3日後。
ときが、渡月橋の中ほどで夜遅く姿を現した。
ときは市バスを乗り継いで嵐山まで来ると、川岸に行き、そこに座って蹲っていた。
膝を抱え、顔が人に見えないように下ばかりを見つめている。
人通りが少なくなると、ときは恐る恐る行動を開始した。
近くにある公衆便所へ。
鏡に、ときは自分の顔を映した。
「あかん。戻れへん」
「何でやろ」
「何で戻れへんねやろ」
ときが鏡に向かって、泣きそうな声で呟いた。
大粒の涙が、一滴頬を伝って流れて落ちてゆく。
「幾ら水を飲んでも戻れへん」
「体質が変わってしもたんやろか・・・」
ときは鏡に映る自分の顔を見てべそを掻いていた。
ときは顔が元の状態になるまで、嵐山近辺に潜む事にした。
茶店の船を勝手に拝借すると、内緒で川を渡り、川の向こうの川岸に船を止め、ときはうっそうとした茂みに息を殺して隠れていた。
空腹と、顔が戻らないもどかしさ。
ただただ、ときは泣いて時が過ぎるのを待ち侘びた。
人通りが絶えた月の無い夜。
ときが渡月橋の上から、じっと川を見ていた。
川は何も無かったかのように、絶え間なくさらさらと流れていた。
「何で元に戻らへんのやろ。前までは、酒の量以上に水を飲めば、元に戻ったのに。子を孕み、流産したので、体質が変わったんやろか」
「それとも、罰か・・・。きっと、罰や。お母ちゃんの遺言を守らんかったから、罰が当たったんやろか」
ときが川に向って語り掛けた。
川は何も答えずに、たださらさらと流れていた。