かくれんぼ、しよ?
「な、なにしてるんだ」
「今のうちだマコト!」
戸惑ったおれの手を、ユウイチが引いた。
カンノさんは両手で肉切り包丁を支えていて、動けそうにない。
今のうちなら、逃げられる!
足を引きずりながら、出口に向かう。
後ろの方から、カンノさんの舌打ちが聞こえた。
「どうして鐘が鳴らない」
「だってモウ、ツカレタモノ」
そんな会話を後に、小屋を抜けた。
「み、ミク!」
するとそこには、コロとミクの姿があった。
「無事だったのか!」
ユウイチがミクに駆け寄る。……そんな資格のないおれは、それをただ見つめていた。
「うん、ユウイチくんも、よかった!」
「ああ!どうした、マコト?早く来いよ!逃げないと!」
「あ、ああ……」
笑顔のミクからは、おれに何を思っているのか――読み取れない。
躊躇いがちに足を踏み出した、その時。
鬼の悲鳴のようなものが、鼓膜を刺激した。
一度三人で顔を見合わせた後、何事かと、後ろへ振り返ると――
「なんだよ、鬼ごっこしないのか?」
ついさっきよりも鮮やかな赤に染まった、本当の鬼が、すぐ傍に迫っていた。
「マコト!」
「ユウイチくん!」
おれの方へ向かおうとしたユウイチを、ミクが制止する。……当然だよな。
「おい、カンノ!お前さっき、どっちから殺すか聞いたよな!?おれからにしろ!」
ユウイチがそう叫ぶと、カンノさんはおれを――いや、おれの足を一瞥し、ユウイチの方へ視線を送った。
「……逃げられても面倒だ、望み通りお前からにしてやるよ」
「よし、行くぞ、ミク!」
ユウイチはミクの手を取り、走り去っていった。後ろを、コロがついて行く。
つい、おれは、その場にへたり込んでしまった。
……本当に、ユウイチを追うのか――カンノさんの方を見上げる。
「よかったな?優しい優しい、友達がいて。……あの拳銃は返す。せいぜい、使い道をよく考えるんだな」
そう言い残すと、ユウイチ達の行った方へ行ってしまった。本当におれを見逃した。