もっと触れてよ

「…って、マジでそう思ってんの?」

「え?」


突然言われた言葉に理解が出来ない。


「だから、俺も仕事が残ってたからこうやって今まで居ると思ってんの?」

「…そ、そうじゃないんですか?」

「まさか」


フッと笑った彼の手があたしの頬をスッと滑る。

その彼の手が頬を滑った瞬間、一瞬背筋がゾクっとした。

好きでたまらない…


「髪の毛、口に入ってる」


付け加えるようにしてそう言った彼は口角を上げたままあたしに背を向け足を進めた。


「あ、あの。さっきの意味って…」

「何?」


振り返った彼に、

「仕事が残ってたから今まで居たんじゃないんですか?」

恐る恐る聞いてみる。


「やる事なんて何も残ってねーよ、あんたが終わるのずっと待ってた」

「え?」

「…って言ったらどーする?」


そう意地悪に言った彼はやっぱり意地悪に笑った。
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