昨日、私の心を奪ったのは彼でした。
他人以上恋人以下
2度ある事は3度ある
――翌朝。
「乃梨子ーーっ」
「…沙希、おはようございます。」
「おはよ!」
登校中、いつものように乃梨子が少し頭を下げて挨拶をするのに対し、沙希は朝から元気だ。
「でもさー、びっくりだよなぁー」
「何がです?」
「乃梨子と裕也が知り合いだったこと!」
「……またですか、」
沙希はそれが本当につまらなかったのか、口をとがらせて拗ねていた。
そんな沙希に、乃梨子はもう呆れ顔だ。
昨日、裕也の店を出てからずっと、沙希はこんな調子だからだ。
「私と裕也さんが知り合いで、何か都合が悪い事でも?」
「だって、面白くねぇじゃん!せっかく、乃梨子に良い男を紹介してやろうと思ったのにさぁー。しかも、裕也と会ってた事、乃梨子は一言も言ってくれてねぇし!!」
「・・・。」
一気に鼻息を荒くしてまくしたてる沙希に、乃梨子は何も言えない。
ここまで沙希を興奮させているのには、少なからず自分にも非があるのだと思った。