分かんない。
この車には、運転席と助手席、
というか、前の景色が見えなかった。
この時間は空が段々暗くなる頃だけれど
流石にこれは様子が変だ。
しかもよく見れば、
前が見えない原因は、カーテンが
かけられていた。
数人でデートでもするとき
キスなどしているのだろうか。
車も発進して、辺りを見回したあとに
気づいたのだけれど、
足に何かが当たっている。
初めの内は外の空気に触れていたからか
冷たかったけれど、
人肌の暖かさだった。
隣を見ると、すぐ横で、
暗闇の中にいる川上の姿があった。
「…ち、近くない?」
見てしまった以上何かを言わないと
気まずくなるだろうと察したので、
とりあえず本当に思った事を
川上に小声で伝えた。
「ああ、ほら、見てみろよ。
兄貴は片付けるのが苦手だから
後ろに荷物まとめて
彼女には見せないようにしてんだ。
そういう意味でも
このカーテンは使われてるんだぜ」
そう教えてくれた。
「てか川上、本当に連れてくるの
私で良かったの?
好きな人がいるのに……」
「お、おう。そうだな。
大丈夫だよ、俺は」
川上の怪しい口調に、
一瞬疑いをかけた。
どうして今の質問で
焦る必要があるのかと。
そんなこんなで、気付けばがやがやと
賑やかな祭り会場についていた。
お兄さんとサナさんが先に降りた。
続いて私達も、車を降りる。
「じゃあこれから
あの人混みん中に入っていくけど、
絶対はぐれんなよ?
俺とサナはずっと手繋いでっから
はぐれることはねえけど、
克哉と美佐ちゃんは友達で、
手も繋ぎにくいだろうし
俺と克哉が手を繋いでも
気持ち悪いだろうから
特に2人はちゃんと俺たちから
離れないように!」
私と川上が、うんと返事をすると
よし、じゃあ行こうか、と
川上の兄さんが言って歩き始めた。
絶え間無い人混みの中、
私は3人からなんとか離れないように
注意して歩いていた。
しかし私の目の前を突如
とても大きな厳つい男が
ゆっくりと横切った。
男が通りすぎたあと
顔から汗がぶわりと出るような
感覚に襲われた。
3人の姿が見えないのだ。