分かんない。
風呂にも入って、寝るまでの時間は
川上の部屋で、
川上の兄さんと川上と私が
怖い話大会をしていた。
私は川上の真横で、
彼の袖をこっそり掴んでいた。
川上は平気そうな顔をしているのに
私は少し縮こまって震えていた。
だけど彼らに知られるのは
情けないから、私はなるべく
平静を保つようにしていた。
「……そういえば
気分が出ないねー。
電気消そっか」
「えっ!」
そう言うと
川上の兄さんは立ち上がり、
電気を消してしまった。
「ん、神埼怖いのか?
俺にもっと近づいてもいいんだぜ」
川上がそんな事を言うから
私の鼓動はとくんと
脈を打っていた。
彼の言葉に甘えて
私は少しだけ彼に近づいた。
こっそり袖を掴んで。
川上の兄さんは
今までにないくらい
真剣な声で怖い話をした。
真っ暗で何も見えない闇の中
ただ彼の声だけが響いていた。
段々怖くなってくる話。
ふと急に川上の兄さんの
声が途絶えた。
何があったのだろうか。
「わっ!!」
「っきゃああああああ!!」
急に誰かが私の耳元で叫んだのだ。
川上がいる方ではない所だ。
気付けば私は……
「………あ……」
思い切り川上に抱きついていた。
顔に熱が集まり始める。
「ごっ、ごめん!」
私は咄嗟に離れようとした。
だけど。
「えっ……」
川上が私に手を回したのだ。
「本当は怖いんだろ?
明かりがついてる時から
お前が俺の袖掴んでたの
知ってたよ。
怖いならこの時間だけでも
くっついてろ」
「う、うん……ありがと……」
「あのー。俺忘れられてない?」
悲しそうな声が聞こえてきた。
川上の兄さんだ。
「あっ、わりぃ。続けてくれよ」
今、きっと私の顔は真っ赤だ。
川上はどんな顔をしているだろう。
私と同じで照れているだろうか。
川上には好きな人がいるのに、と
私の心の中では
そういう罪悪感もあった。
私は勿論嬉しかった。
私の好きな人は、
今でも川上だから。