分かんない。
神社には大勢の人がいた。もう、
この前のような事はないようにと
川上は私と手を繋いでくれていた。
とても暖かくて心地が良かった。
だけど。
「あっ……!?」
突然、
川上と手を繋いでいない方の腕が
何者かに掴まれた。
そしてそのまま
どんどん川上の家族から離れていく。
「離して!誰なの!」
私は必死に叫んだけれど
周りの賑わった声のせいで
掻き消されてしまった。
私の腕を掴んだ者は
段々人気のない所に寄っていく。
人が少なくなったおかけで
私の腕を掴む者の
後ろ姿は見る事が出来た。
だけど、分からない。
誰なんだろう、この人……。
誰もいない大きな木の下。
さわさわと綺麗な音がするこの場所で
奴は掴む所を
腕から手首に変えると、
そのまま木の幹に押し付けた。
同時に背中も幹につく。
瞬間、奴が誰だか分かった。
「あっ………!」
「………やぁ、愛しの美佐。
俺だけの美佐。
あんな男に手を持たれて
気持ちが悪かっただろう?
もう大丈夫。
俺がお前を守ってあげるよ…」
「ひっ……助けて……」
奴は私の言葉に聞く耳を持たない。
「もう大丈夫だって。
俺がアイツから助けてあげたじゃん」
「なーにしてんだ?」
怯えて下を向いていた私は
その声を聞いて
ハッと顔を上げた。
同じく奴も振り向いて、
声の主を見つめていた。
「はっ?お前、誰?
俺の美佐に何か用?」
「ああ、大有りさ」
「はぁ?じゃあここで済ませろよ」
「うーん。
君がそこにいたら
君の大事な大事な
美佐ちゃんが傷ついちゃうかも」
「あ?」
よく理解してないといったように
奴はひとまず私の手を離した。
次の瞬間、声の主は
奴の手首を掴み、背へ回した。
「あっ、いてててててて!
離せ、ばか!!」
「うーん。お前中1だろ?
俺さ、19なんだけど。
君もうちょっと
立場わきまえたら?」
声の主が手を離すと、
弾かれたように奴は逃げていった。