放課後の視聴覚室は密の味
しばらくして、僕は奈菜の頬からそっと離れ、変わりに奈菜の冷たい手を優しく握った。
「僕の夢はさ、僕がおじいちゃんになって、僕の奥さんがおばあちゃんになっても、手を繋いで散歩をすることなんだ」
僕の話に「そうなんだ~」と、感心するように小さく相槌を打つ奈菜は、まるで他人事のよう。
「その想像の中で、いつも僕が手を繋いでいるのは歳を重ねた奈菜なんだ」
僕は、握っている手にギュッと力を込める。
すると、振り向いた奈菜。
ようやく気付いたのか?
「ちょっと待ってよ!それって、私がおばあちゃんって事!?
確かに、秀はおじいちゃんかもしれないけど、その時、私はせいぜいおばちゃんだよ?」
気付いてないし……
しかも、実際はそうかも知れないけど…こんな話の中で、奈菜はそこを気にするのか?
でもまぁ、奈菜らしいと言えば
奈菜らしいか……
「確かにそうかもしれないけど」
僕が苦笑いを浮かべると、「絶対にそうだよ」と、強気な奈菜。
「でも、そうゆうことじゃなくてさ……
その夢を一緒に叶えてくれないか?」