夏色ファントム
たまたま辿り着いた小さな祠。
今日もちゃんと辿り着ける自信はなかった。
昨日の帰り道を思い出しながら、山を登る。
まだ若干山の中は薄暗い。
足を取られそうになりながら、ゆっくりと進む。
昨夜雨が降ったのか、じんわりとした湿気が肌を覆った。
「……あった」
昨日より早く着く事ができた。
あの中に、凛ちゃんとやらの骸骨があるんだろうか。
そう考えるとゾッとする。
祠は開けないようにしよう。
俺は近くの注連縄の巻いてある木に寄り、鋏を取り出した。
「……何してるの」
後ろから、困ったような小さな声が聞こえてきた。
恐らく、凛ちゃんだろう。
俺は、振り向かずに作業を続けた。