夏色ファントム
「じーちゃんに頼まれた。お前を助けて欲しいって」
「私を……?」
「あぁ。でも、もうじーちゃんはお前を見ることができない。だから、俺が代わりに助けてやる!」
「……」
返事は返ってこなかった。
自分でも、何か恥ずかしい事を言った気がして堪らない。
俺は、木と注連縄の間に鋏を入れた。
そして、鋏に力を入れる。
……切れない。
縄が固い。
見た感じ、細くてどうにでもなりそうだが、意外と手強いらしい。
「何で切ろうとしてるの?」
凛がぼんやり訊いてくる。
俺は鋏に力を込めつつ、口を動かした。
「お前の話、じーちゃんから聞いた。注連縄で締め付けられて、祠に閉じ込められたんだってな?」