夏色ファントム
「昔な、この近くの集落に女の子が住んでたんだ。名前を凛と言った。
彼女は大人しくていい子だったんだけど、どこか性格がひねくれていた」
「俺が会ったときもそんな感じだったな」
女の子の事を思い出しながら、じーちゃんの話に相槌を打つ。
じーちゃんは、相変わらず神妙な面持ちで話を続ける。
「その頃、ちょうどここでは病が流行っていた。
治療法も分からず、不治の病として扱われていたんだ」
「まぁ、今ほど医療技術も進歩してないから、しょうがないのかな」
「そう。治る見込みのない病だったからだろう。
発覚したら最後、病人は全て殺されたんだ」
「あー……」
予想していたことだが、面と言われると少し心が痛む。