夏色ファントム
「もしかして……」
先の状況は大体読める。
俺の考えを察したのか、じーちゃんは静かに頷いた。
「凛も流行り病にかかったよ。でも、彼女は集落の方針に従わなかった。
鈍器で殴ろうとも、首を絞めようとも、彼女は全力で抵抗した」
「それって当たり前の事じゃない?」
「現実を受け入れると言うのが、集落の掟だったんだ。
掟を破った彼女は、あの祠に注連縄で固定され、閉じ込められた」
「うっわ……」
あまりにも悲惨な状況に、思わず言葉がポロリと出る。
じーちゃんは暗い顔になり、泣きそうな声で懇願してきた。
「お願いだ。お前だったらできると思う。あの子を解放してやってくれ」