ルチア―願いを叶える者


『不思議だ。お前にはなんでもわかっちまうみたいだな』


そうなんだろうか?
シェアほど真っすぐな人間なら、誰にだって彼が悩んでいる事に気づくはずだけど…


『今回の戦争で側近を一人失った』

『…それは………』



なんと言ったらいいんだろうか。


誰かを失う痛みに、なんて言葉をかけたらいいのか…


大丈夫。
辛かったね。
思いつめるな。


そんな飾りのような言葉をかけられたって心には届かない。



『手に届く者全て、この目に映るもの全てを救いたいと思った。なのに…』


シェアは泣きそうだった。必死に泣くもんかと堪えているように見えた。


彼が…王だから…


『なのに…一番近くにいたあいつを…死なせた…』


誰よりも悲しくて、無力感を感じているのは彼なのに、彼は泣かない。


『王だから、泣いてはいけない?』


大切な人がこの世から消える。それを悲しんではいけない?


『俺は、民の前に立ち、先導する人間だ。民に弱さを見せる事は出来な……』

『なら、見せなければいいんだよ。誰も見ていない場所でなら、君を咎める者はいない』


でなければ…
人は人ではいられなくなる。


命を惜しんで泣き、慈しむ事が出来るから人間は美しいのだから…


『…俺が救えなかった命に、涙を流す事は許されるだろうか…』

『許すもなにも、命を惜しみ泣く事は罪じゃないよ』


そう…罪じゃないんだ…









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