ルチア―願いを叶える者


「こんなお子様に惹かれてるなんて…」

「え…?」


惹かれてるって…
アルが……誰に………?


「花音…」

「アル…?」


さらに強く抱きしめられる。


ア、アル……!?


「あなたが辛い時、一人で泣くくらいなら、俺に縋ればいい…」


アルに…縋る……

「俺はあなたの秘密も、一人で泣いていた事も知っています。今更、言い訳なんて必要ない。俺には素直に甘えたらいい…」


素直に……甘える…


「でも…私…。甘え方…良く分からない…」


今まで甘えろ…なんて言われたの初めてだから…


一人で頑張ってきたから…


「ふっ…なら、俺の胸に飛び込んだらいいんです。後は俺が……」


耳元で甘く呟かれる。
アルの声…かすれてなんだか…


恥ずかしい……


「あなたがもう力を使わないよう…俺があなたを見ていますよ…」

「っ!!!!」


私を…見ていてくれる…
それは前に、私の大切な人がくれた言葉と同じ…


―ポタッ


「花音………?」


アルは驚いたように目を見開く。


「私を…見ていてくれるんだ……」


私…自身を………


「何故…泣いてるんです?どこか痛いんですか?」


少し焦るアルに私は涙を流したまま首を横に振る。


「嬉しいの…」

「嬉しい?」


そう……嬉しい…
私にとってこの言葉は、何よりも優しい贈り物。


「私は…私自身を見てくれる事が何よりも嬉しい…」

「…花音…それはどうしてです?」

「私は…今まで自分を偽ってきたの。どんな感情も笑顔の裏に隠してきた…」


義理の両親に嫌われたくなくて、もう居場所を失いたくなくて…


「私は、養子で、最初は義理の両親に必要とされた。でも…」


両親にとっては奇跡でも、私にとっては悲劇が起きた。


子供が出来たんだ。


「本当の子供が出来た両親は、私よりもその子を可愛がった…。私は、愛されないのは自分のせいだって…」


分かってた…
血の繋がりは、どんな繋がりよりも深い。


愛情も、誰のお腹から生まれたかもわからない私より、二人で育んだ命の方へ注ぐのは当たり前だ。


「だから、ずっと笑顔の仮面をかぶってきたの。本当の私なんて誰も知らない。気付いてももらえない…」


私は…ずっと一人だった。











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