恋人のルール(ベリーズカフェバージョン)
「遅くなっちゃった」
 

去年、陽斗から誕生日のプレゼントにもらったスワロフスキーが可愛い腕時計で時間を確かめながら、待ち合わせのバーに急ぎ足で向かう。

 
もうすぐ3月も半ばなのに、顔に当たる風が冷たい。


待ち合わせは、陽斗と時々行く会社からほど近い、座席数が20席ほどのこじんまりしたバー。


口ひげを生やしたおしゃれでダンディなマスターと、バーテン兼ウェイターのイケメンの大学生しかいない。
 


彩乃は狭い階段を上がり、扉を開けた。


チリンと心地良い鈴の音と共に、カウンターの中にいたマスターが彩乃に向かってにっこり笑う。


「いらっしゃい、彩乃さん。だいぶ前からお待ちかねだよ」

「こんばんは、マスター、いつもの下さいっ」


彩乃は挨拶と注文を済ませると、いつもの場所へ視線を動かした。

 
バーの一番奥の2人席が陽斗のお気に入りの場所だ。


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