珈琲の香り
う……言い返せない。

でも、恋と洋服は関係ないじゃん!

男の子みたいな格好してたって、恋はできるもん。

……なんて言い訳かな?


「とりあえず、着替えよう?遅刻するよ」

「え~……」


これ以上文句も言ってられない。

歩いていくには、早く準備しないと。

私は渋々、桜の差し出す服を受け取った。


「いっちゃん。着替えたら、お化粧もあるからね。」


…………鬼だ。

私が化粧したらどうなるか、桜が一番知ってるのに!!


………とはいえ、桜には言えない………………

言ったら、恐ろしく綺麗な笑顔で一蹴されそう……



「………いっちゃんって、スタイルいいよね。」


下着姿で立つ私の背を、桜はゆっくりと撫でる。

その撫で方がすけべ親父のようで気持ち悪い。


「…気持ち悪いよ。」

「あ、ごめん。でもさ、本当にスタイルいいんだもん。ちょっとムカつく。」


……そんなことでムカつかれても…。

こればっかりは、誰のせいでもないじゃん。

それにさ、スタイルがいいって誉めてくれるの、桜しかいないし……

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