珈琲の香り
あの日……

桜が『いっちゃん好みのいいお店』と連れていってくれた。

アメリカンを豆から入れてくれた涼さん。

無愛想な顔からは想像できない、かわいいラテアートを描いてくれた。

蒼くんを好きだった。

そう思っていたのに、いつのまにか涼さんに惹かれてた。

無口で、無愛想で……

でも、誰より悲しい過去を抱えてて……

そんな涼さんが好きになった。


その涼さんが、風花さんのお墓の前で何か言おうとしてる。

誰よりも強い光を灯して……


「………」

「……………?」

「……俺は…………

俺はもう……誰も好きになれないと……

誰も愛せないと思ってた。

だけど………」

「だけど………?」

「だけど、お前が現れた。
風花とは全く違う。

女らしさもない。

いつもジーンズばっかりの、バイクに乗ったお前が。

……初めは何とも思わなかった。

蒼の同級生。そうとしか……

それが、いつの間にか蒼の恋人になって、悩んだり、戸惑ったり、笑ったり……

だんだん蒼の恋人としてじゃなく、一人の女として気になり出したんだ……」

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