桜が求めた愛の行方


落胆する目の前の人に、何故かさくらの
心は傷んだ。
気にする必要はないわよ。
………そうね、わかってる、
単なる親切に対する返事では
なかった事は認めるわ。

『やっぱりお水を一杯頂けると助かります』

『ペリエに?』

『水道水で結構です』

まるで思春期の反抗する子供のような
態度をとっている自分に、ほとほと飽きれ、
嫌になった。

バカ!!
ここへ何をしにきたか思い出しなさい!
頭と心に今一度命令する。

『ごめんなさい、それでいいです』

緑色の瓶を指した。

『はい』

懐かしいボトルから注がれる水を見て、
さくらは息をついた。

『そのボトル……パリを思い出します。
 始めは炭酸に慣れなくて…硬水にも…
 でもいつの間にか炭酸がないと物足りなく
 なっていました』

『わかります。私も一ヶ月位、お腹を壊
 して苦労しました。水一つで日本に
 帰りたくなったものです』

『ええ、本当に』

さくらは微笑んで飲み、グラスを置いて
はっとして唇を噛みしめた。

何のつもり?
何を和んでいるのよ。

もう!今すぐここから出て行きたい。
何か言葉を発する度に胸がチクチクする。

さっさと本題に入るのよ。
これ以上世間話を続けて、一つまた一つと
何か共通が見つかるのは耐えられない。

『あの、軽井沢の件ですけれど……』

『わざわざ来てもらって申し訳ないが
 気が変わることはないよ。
 それはあなたがすみれの娘だからって
 変えられない』

予想していた話に、予想していた返答。
お互い同時にため息をついた。

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