桜が求めた愛の行方
『大丈夫ですか?』
すみれは、ゆるゆると立ち上がって、
もとの席にしがみつくように腰を下ろした。
『だ、大丈夫よ』
すみれの態度を見て、勇斗は確信した。
何かとんでもない秘密がそこにある。
さくらを知りたい、助けたいと思うからこそ
聞き出さねばならない。
なのに、どうしてこんなに躊躇いが
心を支配しているのだ。
『俺は……俺には夫として、義理だろうが、
息子として知る権利がありますよね?』
『それは……』
すみれは正に断崖絶壁に立たされていた。
神様はなぜ、要人さんでも佐伯夫婦でもなく
私にこの役を命じているの?
私には出来ない!!
できるはずがないじゃない!
逃げるなら、彼がうつむき懸念している
今しかない。
勇斗くんの真っ直ぐな瞳を見てしまったら
私は与えられた使命から逃げられない。
『俺はさくらを愛しているんです。
どうか教えて下さい!お願いします!』
すみれは瞳をぎゅっと閉じた。
嗚呼……なぜ私なのよ……
諦めの長い息を吐き出した。
そうね、私の罪がいちばん重いわ。
この子が憎むのは私でなければならない。
それ故に、他の誰でもない私がすべてを
話すべきなんだわ。
『少し歩かない?』
勇斗が了承する間もなく、すみれは席を
立って庭に向かって歩き出した。
枯れ葉を踏みしめる音だけが秋の静かな
午後に響いている。
考えをまとめる為に、ただ歩いていると
思ったが、すみれおばさまは目指している
場所があるようだ。
もしかして……