桜が求めた愛の行方

要人さんが植えた桜の樹にたどり着くと
勇斗は、やはりな、という顔をした。

『この樹を知ってるの?』

リニューアル前のこの庭の入り口は
桜並木だった。
それを思いきってホテルのゲートに
変えた時に、一本だけ残してここへ
植樹したもの。

『はい、要人さんが植えた桜ですよね』

『要人さん……そうね、あなたはいつの
 頃からか、あの人をそう呼んでいたわね』

『すみません』

『謝る事ないわ、あの人も喜んでいたのよ』

それがどういう事を意味するのかを知ったら
この子はどうなってしまうのかしら……

駄目だわ、私にはそれはできない。
そうでしょ?
すみれはそうすれば返事が聞こえてくる
かのように、桜の樹に触れた。

『ここへ来たらどうしたら良いのかわかる  と思ったんだけど、やっぱりあなたに
 何をどう話したらいいのかわからないわ』

どう、と言うよりもどこまで、よ。
私にどこまで話す権利があるのか、
それがわからない。

『お義母さん?』

俺を見る顔は苦悩の表情が浮かんでいる。
ここで諦めるべきだろうか?
いや、もう引き返せない。

『何がさくらを苦しめているんです?』

『今の私にはそれが確かなもなのか
 わからないのよ……
 でもそうだとすれば、あの娘の態度が
 変わった全てに納得ができるわ』

遠回しな拒否を勇斗は遮った。

『それは何ですか?』

すみれは悲しそうに瞳を閉じた。

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