桜が求めた愛の行方

『そうだな、だがここに押されている印は
 簡単に偽造できるものではないと
 会長ならわかりますよね?』

『確かに……これはさくらの印だ。
 代々藤木の本家の人間だけがもてる
 特別な印じゃ』

会長は苦渋の顔でそれを認めた。

『それをさくらから奪った証拠が
 見つかるかもしれない!』

尚も食い下がる勇斗を見て、沢木は内心で
喜びに躍った。
さあ、小賢しい若者よ、
おまえの間抜けな顔を皆に晒すがいい。

『そう言われるかもしれないからと
 これを預かってきた』

沢木はカランっと勇斗の前に指輪を落とした

『そんな……』

勇斗はストンと力なく椅子に腰をおろした。

何故だ?
どうしてここまで、さくらは……

ただじっと、机の上の指輪を見つめたまま
何も言えなくなってしまった。

勝った!
俺は勝ったんだ!
藤木の全ては俺のものになる!

沢木は大声を上げて笑いたいのを
なんとか堪えた。
変わりにざわめきが収まるのを待って
いる間、勝利の余韻を味わっていた。

『さて……』

沢木の大きな咳払いに、室内がしーんと
静まり返った。

『そこで、お集まり頂いた皆様には
 本日、次期社長についての決を取りたい
 と思います』

『雪成!!』

『株に関して言えば文句なく私が
 筆頭ですので……』

沢木が言い終わらないうちに
会議室の扉が粗っぽく開かれた。

『それはどうでしょう?』

『誰だおまえ!』

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