花嫁に読むラブレター

 そんなことをしてもらったら、引くことも引けなくなる。


 マリーおばさんと、みんなの食事を用意している間も、家の周りに生えた草を刈っている間も、ステイルと山羊の世話をしている間ですら、この結婚を断るのにもっとらしい理由を探しているというのに。これでは、断れなくなる理由が増えてしまったではないか。経済力を餌に、マイアの関心をひきつけようとしているのだろうか。ちょっと隙を見せたとたん、体を覆う大きな網で捕らえられてしまうのだろうか。もし、彼がそんな姑息ともいえる手段で自分を手に入れたいと思っているのだとしたら、どんなにお金を積まれようとも、絶対結婚なんかしてやるものか。経済力の差を見せつければ、ひょいっとついていくような軽い女に見られたようで、気分が悪い。唇を噛みながら、マイアは無意識に強く決心していた。

 そのとき、店の入り口が鈴の音と同時に開いた。
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