花嫁に読むラブレター
「マイアさん、ぼくは貴女に結婚を申し込んだけど、重荷に感じたのならちゃんと断って欲しいんだ」
真剣な面持ちで静かに語りだしたユンは、少しさびしそうだった。
「……ねえ、この前初めて会ったとき、マイアさんはこの湖が綺麗だ、って言ったよね。ぼくはそれを聞いて好きになったんだよ」
目を丸くしてユンを見ると、ユンはいたずらっこのような笑みを浮かべた。
「この湖が国宝に選ばれてる知ってた?」
「知らなかった……」
マイアは改めて湖を見た。
透き通った湖のずっと底のほうで、銀色の体をうねらせて泳いでいる魚が数匹流れていく。生い茂る木々の影が湖面に落ち、光と影の対比がとても鮮やかだ。風が木々を揺らし、雲が流れるたびに、湖面も繊細なゆらめきと共に光を辺りに散りばめる。その様子は、街の教会の天井に張り巡らされたステンドグラスの輝きにも劣らない。
「……マイアさん、今日ぼくに畏まった態度をとるのはなぜ?」
「それは――、ユン様のお父様は今の国王様の親戚にあたる方だって聞いて……そんな方に馴れ馴れしくなんてできません」