花嫁に読むラブレター
『囮の隊の中にステイルが所属している小隊が入っていたそうよ』
いつものように間延びした喋り方ではなかった。それだけに、本当のことなのだ、とマイアの胸にひんやりと冷たい何かが流れた。
『矢が耳に当たって、気が散ったのでしょうね。――そこを一突きにされたと言っていたわ』
報せを持ってきてくれた男性は、ステイルと同時期に入隊したのだと言う。
入った時期も、年齢も、ステイルとほぼ変わりはなく日ごろから親しくしていたらしい。ステイルが倒れたとき、彼はステイルの隣を駆けていた。敵に向かって剣を突き刺すためではなく、逃げるために。
短い悲鳴と、重い体が倒れる音。
それでも彼は振り返らなかった。振り返れなかった。自分の命が惜しかったから。
負けるのを知っていた闘いであった。それでも、自分の命で助かる命があると思えば怖くないと思っていたのだ。しかし、実際には違った。放たれた矢から必死に体を捩じり、恥も自恃の心も、何もかも忘れたように背中を向けたのだと言う。
数日経った頃、彼は戦地に戻った。
顔を背けたくなるような、惨憺たる状況だった。