花嫁に読むラブレター
木のテーブルを、二十人近くの孤児たちと一人の先生が囲むと、家の中はいっきに狭くなる。
年長のステイルとマイアは、もう読み書きは覚えてしまっているので、話を聞いているだけだった。マイアの隣に座る、まだ六歳になったばかりのシェリィが拙い筆跡で次々と白い紙を埋めていくのを横目で見る。自分が六歳の頃も、こんなふうに必死に書いていたのだろうか。なんだか懐かしくなる。
「マイアも最初から教えてもらえば?」
左隣からステイルの冷めた声が聞こえた。
苛立ちをあらわにした表情で、マイアは反論する。
「なによ。わたしはもういいのよ、完璧だもの」
「完璧? あのミミズが這ったような文字が?」
ステイルの言葉に、テーブルを囲む子供らから、わっと笑いが沸き起こる。
マイアは顔を真っ赤にし、隣のシェリィから紙とペンをひったくった。シェリィが「あ!」と短く悲鳴のような声をあげるのを無視して、「ちょっと貸して」と言いながら、勢いよく紙に文字を書いていく。