花嫁に読むラブレター
街のほうから、ひとりの青年が丘を上ってきているのが見えた。上り坂になっているため、息が荒い。途中何度も足を止めて、呼吸を整えている。しばらく休んだあと、再び歩き出す。
やっとのことで平坦な場所にたどり着いた青年は、ほっとしたような表情になる。
ふわふわの前髪が、汗で貼りついていた。来た道を振り返り、「わぁ……」と感嘆の声をあげていた。マイアの存在には、まったく気づいていない様子だ。
おそらく、街を見下ろしているのだろう。振り返った青年は、マイアに背を向けているので表情はわからないが、彼の気持ちは少しだけわかる。昔、この湖に初めて訪れたとき、マイアも同じように声をあげた。
雲は手を伸ばせば届きそうなほど近く、街は模型のおもちゃみたいに小さくなっていたからだ。空の青さも、街で見たものよりずっと澄んでいる。見つめていると、吸い込まれてどこか違う世界へ連れて行ってくれそうだ。なんて幼いマイアは夢見たものだ。
しばらく眼下に広がる景色を眺めていた青年が、ふと振り返る。