花嫁に読むラブレター

「うん、あ、わたしあそこの孤児院で暮らしてるのよ。男の子もいるの。だから平気」

 湖のさらに丘をのぼった先に見える小屋を指差し言ったマイアに、青年は少しほっとしたように笑った。

「そうなんだ。じゃあ、ちょっとごめんね」

 マイアに断りを入れると、青年は水を吸った服をたちまち脱ぎ始めた。細いと思っていた青年の身体は、想像していたよりも筋肉質で、マイアに男を意識させた。水に濡れた腕や背中は太陽の光にあたり、きらきら輝く。ほとんどが家の外で動き回るマイアが、心底うらやむような白い肌。青年の髪から滴った水が、うなじを伝い背中に落ち始めた頃、マイアはたまらず目をそらした。

 頬が赤くなっていることを悟られないよう、何気ないふうを装い訊ねる。

「なんていうの?」
「え?」
「名前よ」

 ああ、と納得し、笑う表情が優しい。

「ユンっていうんだ。ユン・アルヴィオン」
「あら、もしかして貴族さま?」
「……うん、そう、だよ」
「ふーん。あ、わたしはマイアっていうの。孤児だから土地の名前がないの」
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