花嫁に読むラブレター
このとき気づくべきだったのだ。
アルヴィオン。
国の名前だ、と。
けれど、気づかなかったマイアは驚いた様子も見せず、変わらず友達にするような態度を崩さないことに、ユンは驚いた。と、これはマイアがあとでユンに聞いた話なのだが。
目を大きく見開き、まばたきをするたびに濡れたまつ毛がぱちぱち揺れる。それを見て、マイアは首を傾げた。
何を驚いているのだろう。
けれど、マイアはその不思議を追及することもなく、ユンの髪がいまだにびっしょり濡れていることに気づいた。
「そのままだと風邪ひいちゃう。でもどうしよう……。あ、そうだ!」
眉間に皺を寄せていたマイアが、ぱっと顔を輝かす。自分の着ているスカートの継ぎはぎだらけのポケットに手をつっこむと、綺麗に畳んだハンカチを取り出しユンに差し出した。
「夏だからって油断してると大きな風邪をひいちゃうのよ? 髪くらいならそれでなんとか拭けると思うわ」