花嫁に読むラブレター

「――戸籍がないのって、大変?」

 やっとのことで呟いた声はとても小さかった。

「大変……なのかな。わたしはよくわからない。今は誰も病気になっていないからお医者様に診てもらうこともないし、お金も少しだけど国から貰ってるもの。……でもステイルは騎士になりたかった、っていつも言っているわ」

「ステイル?」


 マイアは頷く。

「うん。一緒に住んでる孤児の男の子。わたしよりひとつ上のお兄さんなんだけど、騎士になって、国のために働きたかったって」
「――そっか」

 言って、ユンは突然立ち上がった。

「そろそろ帰ろうかな」

 唐突に、本当に突然のことでマイアが口をぽかんと開ける。

「え、そう?」
「うん。あ、そうだ。マイアさん、このハンカチ借りてもいいかな。いつかちゃんと返しにくるから」

 言って、丘の上の家を指差し「あそこでしょ?」と訊ねる。屈託のない笑顔に、今まで浮かんでいた疑問すら忘れて、マイアもつられて笑顔になる。
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