花嫁に読むラブレター
けど、マイアは知っていた。
ステイルはきっと来てくれると。いつも何かあるたび家を飛び出すマイアを連れ戻すのは、決まってステイルだったから。マイアだけに限らず、ステイルは優しい。ユンのように、見える優しさではないから、勘違いされることも多い。シェリィも、家に来たばかりの頃は、笑わないステイルを見てはよく泣いていた。しかし今は、マリーおばさんと同じか、もしくはそれ以上の懐きようだ。飲んだミルクをこぼせば、何も言わずシェリィの口元を拭い、汚した机を片づける。たったひとつしかないお菓子を落としてしまったと泣けば、ぶっきらぼうに「あげるよ」と手渡す。まだ幼いシェリィにも、遠慮というものは、なんとなくわかっているのだろう。そんなステイルを見上げてもじもじしていると、ステイルは決まって「甘いの、あまり好きじゃないんだ」と呟く。でもマイアはステイルが甘いお菓子が大好きなことも、知っている。普段食事を飲み込むように食べるマイアに「よく噛みなよ」と注意するステイルも、お菓子を食べるときだけはやたら早い。それこそ、マイアですら驚くほどに。
そして、去り際に、たった一度だけ。ぽん、と頭に手をのせる仕草が好きだった。そうされているシェリィを見るのはもちろん、自分がされるのはもっと好きだ。たとえ、それが子供にする態度だとしても、だ。
ステイルはそんな自分が優しいということを自覚していない。自覚していないからこそ、さり気ない。さり気ないからみんなが慕う。優しさを「優しさ」と知っていて行うマイアの行動とは全然違うのだ。
「おばさんの言うことは気にしないで、ゆっくり決めればいいと思うよ。ユンさんだって、いつまでも待つって言ってくれてるんでしょ?」
「うん……」
頷いてはみたものの、マイアは不安だった。