花嫁に読むラブレター

「……どうしたの?」
「あ、うん……。フォークをもうひとつ持ってきてもらうかどうかで悩んでるところ……」
「はあ?」

 マイアはこれでもかっていうほど顔をしかめた。

「失礼しちゃうわ。ユンもステイルと同じことを言うの? わたしが使ったフォークは汚くありません!」

 裕福とは言えないマイアの家では、ひとつの飲み物や食べ物を皆で順番に口にすることも多い。そのときステイルに、「マイアのあとは汚いから嫌だよ」と言われたのを思い出し苛々を募らせた。

「ち、違うよ! ほら、なんていうのかな、同じ食器っていうのも、女の子は嫌がるんじゃないかなって思ったり、あと、ほら、えっと……」

 と、曖昧に言葉を濁しながらやっぱり顔を赤くしてユンは言う。

 辺りに助けを求めるように視線をさまよわせ、マイアの冷めた眼差しを感じたユンは最終的に俯いてしまった。

「もうなんでもいいわよ。とにかく、わたしと同じ食器は使いたくないってことね。はいはい、わかりましたよーだ。すみませーん!」

 マイアが体を浮かせ、片手を上げて店員を呼んだと同時に、ユンは「違うんだよ……」と呟いた。しかし、マイアはユンの言葉を無視して、力強く毒のある語調で「フォークをもうひとつ貸してちょうだい」と、満面の笑みで告げたのだった。
< 73 / 227 >

この作品をシェア

pagetop