艶めきの標本箱
ルージュ・1/50
規則的な波の音に混じって、水音が聴こえる。
私は瞳を閉じたまま、遠い意識で耳を澄ませる。
細やかな水滴が落ちる音。
きっとシャワーを浴びているのだろう。
片方の頬でシーツの感触を味わいながら、とろとろと微睡む。
気怠さがさっきまでの時間を物語っていた。
久しぶりの逢瀬。
もう少しこのままで…。
私はゆるゆると、この眠りに落ちきらない感覚に漂う。
やがてドアが音と共に開き、湿った熱を帯びた空気が私の肌を包む。
うつ伏せる私のすぐ側に、彼の重みを感じ私は薄く目を開ける。
温められた彼の肌。
きっとまだ水滴が沢山光っているはず。
だって、彼はいつもそうだから。