オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-
「あーすげえ笑った……くくっ」
つんけんした態度で数歩先を歩くバンビ先輩を追いながら、隣のバクを睨む。
「ざまあねえなー。トラ、なしてバンビ先輩が不機嫌になるか、分かってねえべ」
「俺の態度が生意気だからむかつくんだろ」
てめぇが前に、バンビ先輩は俺らのこと妙に年下扱いしてるからって言ったんじゃねえか。
「はあ……。百戦練磨のバンビ先輩に、聞き流すスキルがねえと思うか? それをいちいち真に受けてやぁ、赤面して、怒って? 何がしてぇんだろうなあ」
「俺が訊きてーわ」
「だーかーらー。お前、口先だけみたいなこと言われたべや。恥ずかしいなら赤面すんのは分かっけど、口先だけだと思ってんなら怒らず流せばよくね?」
言われてみればそうだな。面倒くせえことは受け流すに限る。俺の場合は主にバクときゅうに対してだが。
「つーか、だから、俺のどこが口先だけなんだよ」
「えっ……お前、そんな鈍かった? 天然ぶるとかマジ本気でキモくて吐きそうだからやめてくんね?」
「ああ!? 俺がクソ正直なのはてめぇが1番よく知ってんだろーが! って何言わせんだよ気色わりぃな!」
「ほんとにな……生まれて初めてトラを不憫に思ったわ」
バクなんかに付き纏われて不憫だって思ってくれる奴がバク本人っておかしいだろ。殴るか。
拳を振るい損ねたのは、バンビ先輩が振り返ったからだった。俺が声を張ったから驚いたんだろう。こちらの様子を窺ってから、再び前を向きトングを開閉させている。