オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-

「おかげで、別れて良かったって再確認できた」

「……、は? 楓鹿、何言って……」

「言い訳もご機嫌取りも、うんざりだって言ってるの」


一瞬、バンビ先輩と目が合ったように思えた。けれど次の瞬間、その瞳は元カレを睨むように見つめていた。


「二度と連絡してこないで。会いに来られても大迷惑。より戻す気なんてないし、友達にすら戻りたくないから」


普段からは想像もつかないほどの低い声。それが震えないよう無理やり絞り出したものだと、分かっていねえようだから。


「……男はべらせて生言ってんじゃねーよ」


尻軽、と呟いてから踵を返したクズ男の脚を引っ掛けるくらいは、目をつぶってほしいもんだ。


無様に転んだ元カレは起き上がるなり敵意を見せたが、俺と背後のバクを見ると、舌打ちをして帰って行った。


「はああああ……びびったー! まあ殴り合いにならずに済んで良かったわ。な、高遠。全員無傷で生還! ……じゃ、ないよな。ごめん」


苦笑する深山先輩から「三井に連絡する?」と訊かれても、バンビ先輩は首を振るだけで離れようとしない。


……とっくに立ち直っているもんだと思っていたんだが、以前『傷を抉られた』とか言ってたもんな。


別れて1ヵ月経ってないと、こんなもんか?


李堵って奴にも越白って奴にも、割かし通常通りに振る舞ってたよな? 単に時間の問題なんだいが。


ひとまずそれは置いとくとして。
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