オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-
「高遠はアンタと違って、トロフィー感覚で誰かと付き合ったりしないよ?」
「……はあ?」
「だからさ、元カノが地元情報誌の巻頭飾ったくらいでヨリ戻しに来たとか、引くよ。ミーハー過ぎて」
暫しの沈黙のあとバクが吹き出し、元カレはカッと顔を赤くする。
「俺以外の奴にまで後ろ指さされたくなかったら、帰ったほうがいいと思うけど」
「~っ意味分かんねえ! ふざけたことばっか言ってんじゃねーよ!」
「……ふざけてんのはそっちじゃん」
ちょっと目を離したすきに、わずかながらバンビ先輩は顔を出していた。
「あの日デートしてた彼女はどうしたの? 別れてないんでしょ? そんなの調べれば分かるのに、」
「だから、ちゃんと話したくて会いに来たんだって! あいつとは楓鹿と別れた勢いでっつーか、前々から告られてたから……っ俺は、楓鹿と別れたかったわけじゃねえよっ」
あの喧嘩は売り言葉に買い言葉だった。別れたあとも忘れられなかった。何度も連絡しようと思った。
元カレの言葉はバンビ先輩にとってどんな味なのか。
「苦くてマズけりゃなんでもいいっつの」
ぼそりと呟いたあと、怒りながらも頬を紅潮させるバンビ先輩が見てえな、と思った。
今みたいに、気丈に振る舞おうとする姿じゃなく。
「情報誌を見て、私が他の人のモノになるかもって惜しんでくれたなら、どうもありがとう」
深山先輩の腕に回していた手が、握り締められる。