ショコラ SideStory
あれか。クリスマスの時のケーキを作ってたのか。
思い出すだけでも胸が軋む。
『忘れてないよ』
そんな言葉を、実証して見せたあのケーキ。
ちょっと勘弁してよ。
こんなところで若い男を前に泣きたくなんか無いんだけど。
「……そっか。クリスマスの。……あの、ケーキ。 ……あっ、ちょっとマツくん、コーヒー冷めちゃうわよ。ほらほら飲んで!」
話題変えなきゃ。
どんどん胸が詰まってくる。
「なんか動揺してません?」
「してない。大丈夫。ああもう、店内暑いわね。そろそろ冷房いれてもいいんじゃないの」
「そうですか? 康子さん、なんか顔真っ赤ですけど?」
そこ突っ込むなー!!
おかしいな。一度手放した主導権はこんなに握るのが難しいの?
「暑いからよ。もう。……もう、変なこと思い出しちゃったじゃない」
「もうひとつ麻由から聞いてたんですよね」
「何?」
「今年のクリスマスに賭けてるみたいだって、何を、かはわかりませんけどねー」
……本日一番の爆弾投下だ。
隠しても隠し切れないほど顔が熱い。
手にも汗かいてる。
白旗を上げる寸前だ。