ショコラ SideStory
ようやく取り戻した年上としての立ち位置に安心する。
「はい、捕まえておきます。もちろん結婚式には呼びますよ。ケーキは親父に作ってもらいますしね。康子さん麻由にいつか会ってください」
「今度連れていらっしゃいよー。休みの日はこの調子で私は暇なんだから。あ、でもそろそろ空いてきたかしらね」
せわしなく動いていた詩子も、カウンターでマサくんと話す余裕が出てきてる。
そうして、……見つけてしまった。
すんごい顔でこっちを見ている、隆二くん。
「そうですね、じゃぁ俺も帰ります。そろそろ麻由も仕事終わるんで。康子さん、ヤキモチやいたあと大事にされてくださいね?」
うまいこと言うなマツくん。
ここからが腕の見せ所ってところよ。
怒りを収めつつ甘い雰囲気に持っていくように……。
……うーん、さっきは勢いで語ってみたけど、結構難しそうだなぁ。
「いやだ、それは忘れなさい。今度は連れてきてね。楽しみにしてるわ」
「今度詳しく聞きますから。じゃ、また」
「彼女とラブラブを楽しんで、じゃあね」
軽く手を振ると、マツくんはレジを済ませて店のドアの鈴の音を鳴らせて去っていく。