ショコラ SideStory


 まず母さんが仕事に出て、親父も店に行った。

今日は切々と掃除の大切さを訴えたので、店の掃除をしてくれるだろう。
信じてる、信じてるわよ? 親父。


あたしは家の片付けを済ませたり、食材の買い出しなどを済ませる。
両親が二人共バリバリ働くので、結局家事のメイン担当はあたしになるのだ。

今日は宗司さんも昼までは用事あるっていうから。
15時に『ショコラ』の前で待ち合わせ。

お昼を手早く済ませた後、少し早めに家をでる。

塾のお掃除もきっと疎かになっているだろう。
あたしがしておいてあげたら、宗二さんは喜ぶかしら。


 母さんのスカートを借りて、可愛い系のカットソーを合わせて『ショコラ』に向かう。

入った途端に漂うのは甘い香り。
厨房では親父がチョコレートブラウニーづくりに没頭していた。


「ちょっと何してんのよ」

「おお、詩子、丁度いい、試食しないか」

「……店の掃除した?」

「少しはしたぞ。なあそれよりこれを」

「それよりじゃないわよ! 今日は客も来ないのにこんなに作ってどうすんのよ、馬鹿ー!!」


山のようになっているチョコレートブラウニーを掴んで食べる。

美味しいわよ、美味しいけどさ。

材料代とかオーブンの電気代とかただじゃないのよ。

無駄に捨てるだけになるなら作らないでくださいよっていうあたしの主張は間違っていないはずだ。


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