ショコラ SideStory


「もう! 外掃いてくる」


苛立ちを何かにぶつけないと気が済まない。
ぶつける対象が掃除であるだけあたしは健全よ。

勢い良く店の前を掃きながら。
頭にもたげてくるのは、昨晩からの難問。

愛ってなんだ。
愛してるってどんな時言うの。

親父みたいにいちゃついてる時に勢いで言うのか。

でも、こっ恥ずかしい! 
あたしはそこまで理性は捨てられないわ。


「愛って、……なんなんだ」


思わず呟くと、小さな靴が立ち止まる。

あら。この靴、そういえばさっきからここを行ったり来たりしていたような。

視線をあげると、サラサラの髪の可愛い女の子があたしを見ていた。
小さいな。小学一年生くらいか? 


「ショコラのおねえさん」


あら、あたしのこと知ってる。

そうね、この子見たことあるかも知れない。
お客さんで来たことあるかも。


「こんにちは」

「あいってかわいくてだいすきでマッサージだとさくらは思います」

「は?」


真剣な表情で、その子は言う。
いやだ、聞かれていたのね?

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