ショコラ SideStory
膝を曲げてしゃがみこめば、俯いちゃったさくらちゃんとも視線が合わさる。
まん丸お目目に桜色のほっぺ。
今はしゅんとしてるから、眉毛が八の字になってる。
「いくちゃんママはどんなケーキが好きなの?」
「ガトーショコラが好きなんです。さくらのおこづかいで買えるかわからないんですけど」
もじもじと開いた小さな手のひらには、百円玉が三つ。
うん。確かに微妙に足りないかもね。
でもチョコレート系のお菓子なら、さっき親父が作っていたから、何とか上手いことアレンジしてくれるかも。
「今日はお店お休みだから、本当のガトーショコラは無理なんだけど。余り物で何とか似たようなのを作ってあげれるわ。ご家族は三人でいいの?」
「はい。さくらとおとうさんといくちゃんママで三人です」
「おっけー、ちょっと入って」
さくらちゃんを入り口へ入れて、厨房に声をかける。
「父さん、さっきのやつ使って、ガトーショコラ風のケーキつくれない?」
「何だその面倒な注文は」
のそのそと出てきた親父は、さくらちゃんを見て目を丸くする。