ショコラ SideStory
「……わかった。しかし、キウイは今無いんだ。詩子、ちょっとスーパーで買ってきてくれないか?」
「いいわよ。さくらちゃん、一緒に行こうか。こんな怪しいおっさんのところにおいていけないわ?」
「おい、詩子!」
「いいから、親父は土台を何とかしておいて」
そう言って店を飛び出そうとすると、逆に入ってきたのは宗司さんだ。
「宗司さん? まだ約束の時間には早いわよ?」
「詩子さんこそ。それに、この子誰?」
突然現れた宗司さんにも慌てず、さくらちゃんはぺこりとかわいくお辞儀をした。
「たなべさくらです。小学一年生です。今日はショコラのケーキを買いにきました」
「そ、そうなんだ」
おいおい、大人の方がたじろいでどうすんだ。
「あのね、宗司さん、実はね?」
あたしは先ほどまでの事情を説明した。
神妙な顔であたしとさくらちゃんを交互に見ていた彼は、話し終えたとき、珍しく眉を寄せていた。
「……事情は分かったけど」
そう言って、しゃがみこむ。
あたしじゃなくて、さくらちゃんに向かって語りだした。