ショコラ SideStory
「さくらちゃん、おうちの人になんていって出てきた?」
「え? えっと。あの。おともだちの家に行ってきますって」
宗司さんの一つため息を吐き出した。
あたしは、心臓が何でか苦しくなってくる。
だって、宗司さんなら絶対に喜んで協力してくれるって思ってたのに、そんな困ったような顔されるなんて。
「だめだ。さくらちゃん、お帰り。ママはきっと心配してる」
「でも」
「だめよ。だって内緒にして驚かせたいんだもん。そうでしょ?」
さくらちゃんが言い終わる前にあたしが援護射撃する。
さくらちゃんは嬉しそうに頷いて、あたしの手をぎゅっと握った。
だけど、いつもならニコニコばっかりしている宗司さんはちっとも笑ってくれない。
「駄目だよ。詩子さん、この子をいくつだと思ってる? このままこの子を買い物に連れて行って、もしこの子のママや知り合いがその姿を見たら?」
「それは……っ。でも、キウイ買うだけならすぐだし。それなら、宗司さんがここで一緒に待っててくれればいいわ。あたしがひとっ走り行ってくるから」
「そういうことじゃないんだよ。この子は嘘をついて出てきたんだ。もし、そのおともだちの家にいないことが分かったら、親御さんはそれこそ心配する。喜ばすより悲しませることになるんだよ?」
「それは……」
確かにそうだけど。
そんな長い時間じゃないし、何とかなるんじゃないの。