ショコラ SideStory

でも、どんな時に言った『好き』より、
この『キライ』は『愛してる』に近いかも知れない。

そう思ったら、もう顔を合わせられなくて、急いでさくらちゃんの腕を引っ張る。


「行こうか、さくらちゃん」

「あの、あの」


可愛いさくらちゃん。
困った声を出しながらあたしに一生懸命ついてくる。


「ごめんなさい。ショコラのおねえさん」

「違うの。いいのよ。ケーキは後で届けてあげるから。とりあえずおうちに帰ろうか」

「はい。でも、おねえさん、おにいさんとケンカしちゃった……」


あなたがしょんぼりすることなんか無いのに。
肩を落としたさくらちゃんは、あたしの手をぎゅっと握った。


「ガトーショコラが無いって言っていたので、お父さんの好きを一緒にしたら、いくちゃんママは喜ぶかもって思ったんです」

「え?」

「さくら、たしざん習ってるんです。1たす1は2なんです。たしたらどんどん増えてくんです。いくちゃんママの好きなチョコとお父さんの好きなキウイをたしたら、きっと愛してるのケーキになると思ったんです」

「さくらちゃん」

好きと好きを足したら、愛してるになるのかしら。

さくらちゃん的にはそうなのかな。

ううん。
愛してるって多分、心の奥底から突然思うもんなんだわ。

さっきのキライみたいに。
突然沸いて来るんだと思う。

少なくとも、あたしの『愛してる』は多分そうだ。

こうしてみると、愛してるって、人それぞれなのかもしれない。

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