ショコラ SideStory

「さくらちゃんは、いくちゃんママが好き?」

「はい。とっても優しいです。さくらの為にいっしょうけんめいがんばってくれるんです」

「嬉しい?」

「はい! とっても」


よその子供なのに、見てるだけで胸が温かくなるのは、きっとこの子の『あいしてる』が、この零れるような笑顔に含まれているから。


さっきの『キライ』に潜んだ『愛してる』を見つけるなんて芸当、宗司さんにはきっと出来ないんだろうなぁ。


いつも優しいあたしの大好きな人は、きっとあたしが怒ってるって落ち込んでる。
何も言わなくても理解してくれるような関係には、まだまだ程遠そうだ。


ぎゅっと手にこめた力を強くすると、さくらちゃんも握り返してくれた。


「いくちゃんママにウソついたことあやまります」

「そうね。さくらちゃんはいい子ね」

「はい。だからおねえさんも仲直りしてください」

「……うん。そうねぇ」

「さくらが先にがんばります」

「そうね。見本見せて頂戴」


お願いするとにこりと笑う。

可愛い。
こんな可愛い子が娘だったらいいなぁ。

いつか、あたしも親になる日がくるのかしら。
今のあたしは子供過ぎて、想像もつかないけれど。
こんな風に素直で可愛い子に育てられたらいいなあ。


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